■「嘘をつくな!そんなクリニック聞いたことがないぞ!(怒)」
今から10年ほど前のことです。受付で男性の患者さんが顔を真っ赤にして「嘘をつくな!そんなクリニック聞いたことがないぞ!(怒)」と大きな声をあげられました。なぜそのようなことが起こったのか。そこに至る経緯をお話させてください。
■勤務医時代の理事長の診療スタイルは「ゆっくり丁寧に!」でした
実は、私は、大きい病院での勤務医の時代は、ゆっくり・じっくり診察するスタイルでした。だいたい、ひとりあたり20分~30分はかけていたかと思います、色々と患者さんの趣味の話を伺ったり、ご家族のことを伺ったり、雑談しながら、楽しく診察をしていました。当時は、まだまだ戦前生まれの方もたくさんいらっしゃったので、診察中に戦時中の思い出話などを聞かせていただけるのも大変貴重な経験でした。子供も大好きなので、小さいお子さんとお話したりしながら診察するのも、とても楽しかったですね。ですので、本来は、私は、そのような「ゆっくり丁寧に診察するスタイル」の医師でした。
■「長らくこの業界にいますが、こんなクリニックは見たことがありません」
そんな私が開業することになったわけです。もう今から10年以上も前のことですが、いざ開業してみると、初日から100名以上の患者様が来院されました。当時の市内での最高記録であったようで、「長らくこの業界にいますが、開院初日からこんなに患者さんが来院されるクリニックは見たことがありません」と複数の業者さんからお言葉をいただきました。その後もどんどん患者様は増え、最終的には、多い日は、1日200名以上、ときには300名近い患者様が来院されるようになりました。
■「患者さんにかける時間は絶対に減らすべきではない!」
私は、当時は、「医者である以上、どんなに混雑したとしても、 患者さんの診療にかける時間は減らすべきではない!」「ひとりひとりにゆっくり丁寧に診察すべき!」と思っていました。そのため、1日に150人以上来院される日も、自分のスタイルを変えずにおひとりおひとりゆっくり時間をかけて診療していました。すると、とんでもないことに・・・
■「嘘をつくな!そんなクリニック聞いたことがないぞ!(怒)」
1日200人ちかく来院されるにもかかわらず、おひとりおひとりにじっくり丁寧に時間をかけて診察し、長い患者さんでは20~30分近くかけることもありました。すると・・・どうでしょう。なんと、診療の終了が夜の21時過ぎまでになってしまいました!(よく考えれば当たり前ではありますが・・・)その際、多くの患者さんから「こんな遅くまで診てくださってありがとうございます」と感謝の言葉をいただきました。しかしながら、同時に、少なからぬ患者さん方から、「こんなに待たせるなんてあり得ない!」とお叱りの言葉を受けました(それはそうですよね)。初めて来院されたある患者さんに対して、受付スタッフが、「本日受診できますが、今からですと、診察が夜21時になりますがよろしいでしょうか」とお伝えしたところ、「嘘をつくな!そんなクリニック聞いたことがないぞ!(怒)」とお叱りを受けたこともありました。お怒りになられるのは当然です。今から、十数年前のことです。当時でもあり得ないことでしたが、今の時代では時間短縮が意識されている時代ですので、もっともっと考えられないことです。今から振り返れば、色々と工夫のやりようはあったと思うのですが、なにせ当時は「市内での過去最高記録」であり「異例中の異例の事態」です。そのため、どうして良いのか、私も周囲も含めて業界の方も誰もわかりませんでした。患者さん方のストレスは言うまでもありませんが、同時に、当時の当院のスタッフ達も、残業時間が増えてしまい、疲労が重なりました。
■診察を急ぐしかない!そのために、とんでもないほどの早口で説明!
「これでは、患者さんもスタッフもどちらも幸せにならない」と悟ります。そのためにはどうしても「診察を早くしなければ」ならない。それでも、丁寧な説明は絶対に省きたくない。そこで、「思いっきり早口で」説明するようになりました。とにかく、少しでも患者さんの待ち時間を減らすためです。口から泡でも吹くかのように、まくし立てるように一生懸命説明しました。すると何が起きたかというと・・・患者さんが次回の再来の際に、さまざまな質問されることが増えました。しかし、その内容は・・・・「あれ?その内容は先週の診察であんなに一生懸命説明したことなんだけどな・・・」ということが多発しました。つまり、あまりに早口だったため、患者さんには何も伝わらなくなっていたわけです。病気のことや、その後の経過、薬の注意点など、全く伝わらなくなってしまったのです。当たり前と言えば当たり前ですが、意外に今でも、他のクリニック様では、「他のクリニックで、なんだか色々早口で説明されたがよくわからなかった」ということが多くあると患者さんから伺います。確かに当時、私の「一生懸命さ」と「熱意」だけは患者さんに伝わったようでした(笑)しかし説明が伝わっていなかったので結局病気はなかなか治りませんでした。その当時の患者さんは私の熱意を感じて、それなりに満足して、笑顔で診察室を出ていかれる方も多かったです。しかしながら、何のために一生懸命説明しているのか?それはあくまで、患者さんの病気を治すためです。「熱意」だけ伝わっても、患者さんの「病気が治らなければ」意味がありません。本来の「一生懸命説明していた意味」が失われてしまった瞬間でした。
■いよいよ・・仕方がないので説明を省く?
そこでどうすればよいのか?とうとう私のこれまでの信念を曲げて「これまで一生懸命、丁寧に説明していた」ことを、一部だけでも、省かざるを得ませんでした。大事なポイントだけはしっかりお話しつつ、それ以外の細かい内容は省くことにしました。これまでもお話した通り、それまでの私は、他のクリニック様では考えられないほど、すべてを丁寧に説明していました。ひとつひとつの病気の説明や、今後予想される経過、お薬の使い方や注意点など・・・。しかし、あまりに待ち時間がかかりすぎるため、自分の信念を曲げて、細かい部分の説明を省かざるを得ませんでした。すると、こんなことが起こりました・・・
■やはり説明を省いた分だけ患者さんに不利益が!
実際、今までなら「お薬は全体に広く塗ってくださいね」としていた説明を省きました。すると次回の再来で「どう塗ればよいのかわからなかった」とお声をいただきました。また「この湿疹は一旦広がりますが、その後、引いていきますから、心配ありませんよ」といつも説明していた内容をはぶきました。するとその3日後に「どんどん湿疹が広がってきて心配です!」と患者さんがあわてて駆け込んできたり・・・やはり、丁寧な説明を省いたら省いた分だけ、患者さんが不安になったり困ったりする事態が多数発生しました。そのため、やはり私としては「患者さんが治るためにはしっかり説明したい!」。そして「患者さんへの説明は絶対に省きたくない!」とあらためて感じました。しかし、丁寧に説明すれば患者さんの待ち時間がとんでもないことになってしまいます。ではどうすれば・・・???
■受付を早めにストップして受診の人数を制限せざるを得なくなった
それまでの私は、「患者さんは困って病院に来ているのだから、どんなことがあっても受診希望の患者さんを断るなんてあり得ない!」と思っていました。しかし、受診する患者さんに次から次と不利益が生じているのを、日々見ていると、何とかしなければなりません。そこで自分のこれまでの信念を曲げて、受付を早めにストップして、患者さんの人数を制限してみました。そうすることで、またおひとりおひとりに丁寧に診察・説明できるようになりました。ところが・・・
■「いつ行っても受け付けてもらえないじゃないか!(怒)」
どうしても丁寧に診察・説明しようとすると、1日80人が限度です。当院は来院者数が多いときは200名を超えます。そうすると、1日200人来院されるのに、80人しか診察しないとうことは、120人をお断りするわけです。これって、「地域医療」の観点からしてどうなのでしょうか。全く地域の皆様のお役に立てていないですよね?実際、町内会での集まりでは「先生のところはいつ行ってもいっぱいで受診できない」と多くのお叱りのお声をいただきました。近くの他科のクリニックの院長先生からも、「先生のところに患者を紹介したいのにいつもいっぱいじゃないか!どうやってうちの患者を受診させたら良いんだ!(怒)」とお叱りのお電話もいただきました。この頃は、私自身も、あまりの忙しさと、地域のお役に立てていない申し訳なさから、疲労と心労が重なり、ウツ状態にまでメンタルが追い込まれた時期でもありました。
■ではいったいどうすれば・・・
・患者さんに治っていただきたいし、安心してほしいので詳しく説明したい
・しかし待ち時間がとんでもないことになるので診察は急がなければならない
・かといって、説明を省くと患者さんに不利益が生じる
・そのため、どうしても丁寧な説明を省きたくない
この「無理な条件」を満たす方法として苦肉の策として考えたのが、「私の診察は最低限の重要な項目だけの説明にとどめる。かわりに私がいつも細かく説明している内容はスタッフから説明してもらう」という方法でした。そこからは、各病気別に「私が患者さんに説明したいこと」をすべて文章化し、それをスタッフ達に覚えてもらい、スタッフから説明することにしました。
■これでやっと現在の診療体制に・・・
「私がもっとも大事なポイントだけをお伝えし、他の丁寧な細かい説明は、別室でスタッフからお伝えする」という現在の診療スタイルになりました。これによって、1日に200人来院される日でも、おひとりおひとりに丁寧な説明を省くことなく、かつ待ち時間も(まだまだあるものの)以前よりずっと短縮することができるようになりました。夜21時までお待たせすることは無くなりましたし、患者さんを5時間も6時間もお待たせすることはなくなりました。また患者さんを100人以上も「お断り」することも無くなりました。また患者さんへの説明も省かずに済んだので、患者さんに、説明不足による不利益が生じることもほぼ無くなりました。この体制になったのは今から7~8年ほど前です。そして、むしろ、私が早口でまくし立てるように説明するよりも、別室で落ち着いてスタッフから説明することで、患者さんも安心して説明を聞くことができるようになりました。
■でもそれってベストではないですよね?
このような経緯があり、現在の診療体制となっています。「待ち時間を少しでも短く」したい。でも「患者さんへの説明は省きたくない」。という矛盾する2つを同時に満たすためには、こうせざるを得ませんでした。しかし、当然、これが「ベストの方法」ではないのは明らかです。本来は医師が最初から最後まで説明するのがベストです。待ち時間もまだまだ長く、もっと短い方がベストです。それは私たちも十分理解しています。そのためにさらにいくつか工夫を重ねています。
■web受付を導入しています
そのためにweb受付システムを導入しています。他のクリニック様では「一度病院へ行って、名前を書いて、また戻ってこなければならないというところもある」と患者さんから聞いています。また「他のクリニックでは、病院で受付してからいつ呼ばれるかわからず、ひたすら、呼ばれるまで2~3時間も病院内で待ち続けなればならない」という医院様もあると聞いております。当院では、webで受付ができて、順番が来たら呼ばれますので、その間の時間を有効に利用していただけます。どこまで診療が進んだかも常にチェックできますし、自分の順番が来たらお知らせする通知機能もあります。
■自動精算機の導入など、常に改善しより良くするための努力を続けています
私たちは常により良い医療を提供するために、努力を重ねています。
1)患者さんへの説明は、常にブラッシュアップして改善しています。
2)説明が足りないところや、不明だった点はすぐに全体でミーティングをして改善しています
3)月に最低でも数回は、毎月毎月、説明内容を改善し続けています
4)ご自宅に帰ってから、説明でわからなかったところを確認できるように「治療カード」を作成し、患者さんにお渡しするようにしました。
5)少しでも会計時間を短縮するために、自動精算機を導入しました。
6)今後は、ご自宅でも説明が聞けるように動画を使った説明システムなどを検討中です。
■そうは言っても・・不満です!(怒)
当院に多くの患者様が来院されるということは、決して100%ではないにしろ、ある程度ご満足いただいているか部分もあるのだとは感じております。さらに毎年ご来院いただく患者様の数が増えているのも、ある程度が患者様のお役に立てている部分もあるのだとも感じております。しかしながら、もちろん、あなたからすれば、当院はご不満だらけかも知れません。至らないところばかりでご迷惑ばかりお掛けしていると自覚しております。本当に申し訳ございません。あらためてお詫び申し上げます。
■考えられないほどスタッフ教育に時間と労力をかけています
実際のところ、多くの患者様から、「先生も、受付の方も、看護師さんもみんなとてもやさしい」というお声を日々たくさんいただいているのも事実ではございます。これは何の努力もなく、一朝一夕にできることではありません。1日150人~200人来院される場合、当然忙しくなります。一般的に、忙しくなれば、接遇のレベルは下がります。しかし、当院では、200人近く来院されても、時間が許す限り、本当におひとりおひとりに、心を砕いて丁寧に対応させていただいております。これはちょっとやそっとの努力で成しえるものではありません。そのために、当院では、常に膨大な時間をかけて接遇の研修し、スタッフ教育に時間を費やしています。さらにどうやったら少しでも患者さんにより良い医療を提供できるか、週に2回ミーティングを行い院内の体制を改善しています。
■Q&A:よくいただくご質問
Q.先生の診察が早いのは「回転」を重視しているからですよね?
たしかに、以前ネットの口コミでも「回転を重視している」というお言葉をいただいたことがあります。しかし、実際は「回転を重視」しているのではありません。「患者さんの待ち時間を少しでも減らしたい」という必死の努力です。例えば、200人の患者さんがいらしたとして、「一人当たり1分」だけ診察が長くなると、最後の患者さんの待ち時間は「3時間」増えます。これは「3時間待たされる」ということではありません。もともと「3時間待ち」だったところに、さらに1分伸びたことで「さらに3時間加算される」ということです。つまり「合計で6時間待たされる」ということです。皮膚科を受診する際に毎回「6時間」待ちたい方がいらっしゃるでしょうか?それを防ぐためには、少しでも診察を急がなければなりませんが、あなたに良くなっていただきたいので、丁寧な説明はどうしても省きたくありません。そのため、スタッフから詳しく病気に関して説明させていただいております。ただ単に「回転だけ」を重視するのでれば、そもそも丁寧な説明はしません。「とりあえずこれだけ塗っといて」で終わりにすれば、ずっと回転は早くなるからです。診察を急いでいるのは、患者さんの待ち時間に配慮しているからです。
Q.たくさんの患者さんを急いでみようとして、結局「儲け主義」なんですよね?
違います。当院は忙しい中でも限界ギリギリの努力をして、丁寧に説明しています。しかし、患者さんにいくら丁寧に説明したとしてても、頂戴する診察代金は1円も変わりません。むしろ、逆に、時間をかけて説明すればするほど、利益率は低下します。本当に儲けたいのであれば、一切丁寧に説明せず、「とりあえずこれ塗っといて」とお薬だけ処方すれば、一番回転が速いので一番儲かると思います。また患者さんに丁寧に説明して対応するために、当院では、通常の皮膚科よりもスタッフ多く雇用しています。そのため、人件費も高くなります。ですので、丁寧な対応をしている分、利益率は低いです。利益率が下がってでも、あくまで「患者さんに治っていただきたい」という一心で、診療を行っております。
Q.近くの○○皮膚科の先生はもっと丁寧に診察してくれましたよ?
ご指摘ありがとうございます。おっしゃる通りだと思います。しかし、その「丁寧に診てくれた皮膚科」が、1日何人患者さんがいらっしゃっているか、がポイントだと思います。実際、他の1日200人来院されるクリニックでは、ほとんどが
・診察中患者さんの顔も一度もみない
・病気への説明は全くない
・ただ「これ塗っておいて」と薬を処方されるだけ
・「治らない」と訴えても無視されて前回と同じ処方もらうだけ
と、多くの方から伺っております。ある医療業者さんからも、「先日、ある地域の皮膚科にこどもを受診させたんです。そこは1日150人以上来る皮膚科なんです。でも先生がずーっとカルテだけみて一度もこちらを見ないんです。そしていつもの決まった質問だけされて診察終わりになりそうだったんです」「なのであわてて『先生!いつも取引している○○社の田中(仮)です!』と伝えたところ、先生がやっとこっちを向いて「おお!田中くんか!」と気が付いてくれました」と以前聞いたことがあります。この病院が悪いわけではありません。これがむしろ普通だと思います。通常、他の1日150人~200人来院される皮膚科クリニックでは、どうしてもこのような対応とならざるを得ません。患者さんが少なれければ、丁寧に時間が割けます。しかし、患者さんが多ければ、どうしても割ける時間が限られてしまいます。しかし、私はどうしても手を抜きたくはありません。そのため、「医師は的確な診断と重要な点を説明することに集中し、詳しい細かい疾患の説明はスタッフから」という現在の体制となっております。ただどんなに頑張っても1日60~80人の来院者数のクリニック様と比べればどうしても診察時間は短くなってしまうことは事実です。これまでお話してきたとおり、私も、勤務医時代や開業して数年は、おひとりおひとりに20分~30分かけて、丁寧にじっくり対応しておりました。本来は私もそうしたいです。しかし、どうしても多くの患者さまの待ち時間を考慮し、さらに、診療を断ることなく、スムーズに診療を進めるために、現行の体制となっておりますことご了承いただければ幸いです。結果的には「医師の診察時間+スタッフからの説明時間」を合計すると、一般的な皮膚科で患者さんに関わる時間よりも長くしっかり時間をとっていることも事実としてお伝えしておきます。
Q.私は最初から最後まで医師に説明してほしいんです!
おっしゃる通りです。それが理想だと思います。医師から丁寧に説明があった方が、一番安心できて一番納得できますよね。しかしこれまで述べてきた通り、1日200名近くの患者様にご来院いただく当院では、それがどうしても困難となっております。大変申し訳ございません。ただ、スタッフからの説明内容は、すべて「私が患者さんに説明したいこと」を網羅したうえで説明しています。そしてさらにその内容を「治療カード」として紙に印刷して自宅でも見られるようにお渡ししています。説明内容も常にスタッフ達と相談して、分かりにくいところや、ご不満があった内容はすぐにミーティングで話し合って、内容や表現を常に更新し続けています。先ほどもお話した通り、私が説明したいことを早口でまくし立てるように説明してもほとんど伝わらなかった過去があります。「医師からすべてを説明すること」が理想ではありますが、その結果、説明内容が伝わらないと意味がありません。私たちの願いは「あなたの病気を治すこと」です。そしてそのためには「病気についてしっかりご理解いたくこと」が私たちの目的と考えています。そのため、スタッフからの説明であったとしても、決して「説明内容」や「合計の説明時間」では、手を抜いておりません。むしろ、すべてを医師が説明する一般的なクリニック様よりも、より丁寧で、より深い内容になるよう努力しております。
Q.せめて「時間予約制」にしたらどうですか?
「〇月〇日の14時~診察」のように「時間指定」できると嬉しいですよね。しかし、1日150人を超える皮膚科で時間予約制にすると、オペレーションが破綻してしまい、患者さんの待ち時間が結果的にメチャクチャになってしまうことが、全国の皮膚科クリニックですでに証明されています。結果として「患者さんが多大な不利益をこうむってしまう」ことが全国的に業界内では知られています。皮膚科外来は、常に決まった患者さんだけがいらっしゃるわけではありません。さっき道端で転んで頭や顔から血を流して緊急で来院される方もいらっしゃいます。また飲食店で仕事中に、ひどいやけどをして緊急で来られる方もいらっしゃいます。「さっきスズメバチに複数刺された」と駆け込む方もいらっしゃいます。つまり、予約していた患者さん以外の患者さん方も多数来院されるのです。また予約していていた患者さんであっても、症状によっては、外来の合間で緊急手術を行わなければならない場合もあります。そうなると、どうしても予約していた時間よりもどんどん押していってしまうのです。結果として、時間予約した患者さんを時間通りには診察できない、という事態が多発してしまいます。「11時と言われたから11時に来たのに30分待たせるとはどういうことだ!だったらはじめから11時30分に予約させろ!(怒)」とご不満になってしまいます。これはもっともなご不満です。では反対に、予約の患者さんを優先させて、すべての急患をお断りすれば、時間通りにお呼びできます。しかし、逆の立場になってみるとどうでしょうか?あなたやあなたの家族が「昨日からかゆくて夜も眠れなかった」というときに、「予約でいっぱいなので、今日は受付できません」と断られたらどういう気持ちになるでしょうか。また、けがをして顔から出血して、血がダラダラと出ているときに「時間予約の患者さんでいっぱいなのであと3時間そのままお待ち下さい」と言われたらどう感じるでしょうか?ハチに刺されたかたを後まわしにして、その間にアナフィラキシーショックになってしまえば、患者さんの命にかかわります。つまり、来院者数が多いクリニックで完全予約制にすると、
1)せっかく時間で予約したのに、混み過ぎて時間がずれてしまい、時間通りに呼ばれない
2)急患で急いでみてほしい方は、お断りされたり、受診すらできなくなってしまう
3)なんとか診察してもらえるとしても、後回しにされるため、急患にも関わらず異常に長い待ち時間になってしまう
という現象が起きます。結果として「誰もが得をしない」状況が生まれてしまいます。そのため、業界内では、ある程度の来院者数がある皮膚科で時間予約制にすることは難しい、とされています。以上の理由から当院でも予約制にはしておりません。ご不便をおかけして大変申し訳ございません。何卒ご理解ご協力いただけますと幸いです。
■正直、引退を考えています。
今、時代は「待ち時間」に厳しくなっています。ある飲食店の待ち時間の専門家の方からこんな話を伺いました。「数年前までは、コンビニで並ぶお客さんは、3番目の順番の方がイライラしていた。しかし、ここ数年は、会計待ちの一番前の方(つまり次の会計の順番の方)でも、すでにイライラするようになっているんですよ。」とのお話でした。時代は、何事もスピーディーになってきました。その分、待ち時間にも厳しくなって来ています。これまでもお話してきた通り、当院は「どんなに混んでいても、手を抜かずに丁寧にしっかり説明する!」という方針でした。実際、他のクリニックを受診した多くの患者様から「他のクリニックでは、ほとんど病名や経過、生活の注意点などの説明を受けたことが無い」と伺っております。しかし丁寧に対応することは同時に、それによって生じる待ち時間が伸びてしまうことを意味します。いつの時代でも「時代の変化が正しい」と私は考えています。そう考えると、もう私の診察スタイルは時代遅れになっていると感じるようになりました。実際、東京都内などでは、圧倒的に流行っているクリニックは、「ほとんど詳しい説明もなく、すぐさま欲しいお薬を処方するドラッグストアの延長のようなクリニック」が圧倒的に高い評価を得ています。
・「病名をはっきりとお伝えする」
・「症状や原因の詳しい説明」
・「原因を探るための検査方法」
・「他ではやっていない様々な治療方法」
・「生活習慣で気を付ける点」
など・・・当院での取り組みは、もはやあまり時代に必要とされなくなってきているのだと感じます。そんなことより「待ち時間が短くて、さっさと薬もらえる方が良い」というのが時代の流れであり、それが「正しい」のだと思います。かと言って、ドラッグストアの延長のようなクリニックを運営するのであれば、正直、私が運営する意味が無いと思っています。それならば、他の医師でも、誰がやっても変わらないのですから。なので、近ごろは、「時代のニーズにマッチした、もっと若くて優秀な医師にあとを譲った方が良いのかな」と、私自身は引退することを考えています。老兵はただ去るのみ、といった心境です。
■無理にとは言いません。でも、もし良ろしければ・・・
最近は、googleの口コミなどで、低評価をいただくことが多くなりました。全国的にも、1日150人以上来院するクリニックは総じて低評価になってしまう傾向にあります。やはり、どうしても待ち時間が長くなってしまいますし、お一人お一人に割ける時間に限りがあるため、満足度も低下してしまいます。しかし、当院は、200人の患者さんに対して、おひとりおひとりに心を砕いて丁寧に対応しております。しかしそれは働く医師やスタッフにとって仕事における「業務負荷」は極めて高いです。そしてそれを実現するは、実のところ、かなり至難の業(わざ)なのです。他のクリニック様では考えられないような膨大な時間と労力をかけて、ミーティングを実施し、研修を受け、つねに自省し、改善して、患者様に貢献できるようまじめに、真摯に仕事に取り組んできました。むしろ、患者さんのことを何も考えず、とりあえず、あまり説明せずにお薬だけ処方する方が、よほど業務としてはラクです。
ただ、私たちはどうしても、
・「患者様の不安を取り除き、笑顔で帰っていただきたい」
・「そのためには患者さんご自身が、ご自身の病気について知っていただきたい」
・「そのために、病名や原因検査、生活の注意点などをお伝えしたい」
と思っています。
そのためにあえて、大変な道を選び、日々努力しています。無理に感謝しろ、とか無理にほめろ、などと言うつもりは毛頭ありません。引き続き、至らないことがあれば、厳しいお声を下さい。
でも、もし、ほんのちょっともでも、当院の診療や対応に、ポジティブなものを感じられた方は、googleの口コミにポジティブなコメントをいただけると嬉しいです。あなたの一言で、本当に私たちの心が救われます。
■もしあなたがスーパーのレジ係だとして、目の前に200人の会計待ちのお客さんが並んでいたとしたら?
もしあなたがスーパーやコンビニのレジ係だとして、目の前に200人の会計待ちのお客さんが並んでいたらどうでしょうか?
当院では、まさにこのような状況となっております。そのため、少しでも待ち時間を減らすために、対応を急げば、「ちゃんと対応してもらえなかった」とご不満をいただいてしまいます。かといって少しでも丁寧に時間をかけて対応していくと、「いつまで待たせるんだ!」とお怒りのお言葉をいただきます。まさに「あちらを立てれば、こちらが立たず」です。「待ち時間の解消」と「患者さんへの丁寧な対応」という絶対的に矛盾する2つの事柄を、何とか、両立させ、実現させようという無理難題に、当院は挑戦し続けています。そのために、医師、スタッフ一同、常に努力し続けています。ご不満ご不便ばかりおかけし申し訳ございませんが、何卒ご理解いただけますと幸いでございます。
■最後に:
「これほどまで丁寧に対応している皮膚科は全国で2か所くらいしかありませんよ」
数年前になります。自分たちのダメな部分や改善点を客観的に分析して指摘してもらおうと、外部の専門家を呼んで「診療分析」というものをしてもらいました。その時にいただいた専門家からのコメントが、「1日に150人以上来院するクリニックで、これほどまでおひとりおひとりに丁寧に対応している皮膚科は、私の知る限り、ここを含めて全国で2か所くらいしかありません」というものでした。当院は、開業以来、1日200名以上の患者様にご来院いただき、開業10年以上経過しましたが、今では、「仙台市民の20人に1人が受診する皮膚科クリニック」となりました。色々と至らないところばかりでいつも申し訳なく思っておりますが、これもひとえに皆様方のおかげと感じております。いつもご来院いたく患者様へ心より感謝申し上げます。
理事長 工藤 洋平