「禅」は仏教の教えで、坐禅の修行をもとにしたもの。僧侶の吉村昇洋氏によれば、私たちの日常に禅をとり入れることで心が整い、豊かな日々を送れるそうです。具体的なヒントをいくつか紹介しましょう。
「玄関」は仏教から生まれた言葉だと知っていますか? 「玄」は深い悟り、「関」は関門を意味し、「深い悟りに入るための関門」が玄関だとされています。大切な場所であるとともに、第一印象を決める場所。いつもきれいに整えたいものです。そのためにも、ものをできるだけ置かず、掃除しやすくするのがポイント。靴はすべて下駄箱にしまうのが理想ですが、できない場合は靴をそろえることから。靴を脱いだらいったん座って、きちんとそろえる。ちょっとしたことですが、丁寧に整えることの心地よさを実感するはずです。
次に食事。禅では料理から食事、あと片づけまで、型が決められています。食べるときは、「食べものを口に入れたらいったん箸を置く」という作法があります。手を止めることで噛むこと自体に意識を向け、食べものを味わうのです。精進料理はもともとだしを効かせた薄味ですが、食べものに集中することで素材のおいしさを直に感じることにつながります。おいしいと感じることで幸せな気持ちが、そして、大切な命をいただいていることに感謝の気持ちが起こってきます。
さて、面倒なこと、緊急性のないことを先延ばしにしていませんか? 吉村さんは毎日3時半に起きて坐禅をします。つらいな、しんどいなと思う日もあるそうですが、坐禅に入るとそんな気持ちがなくなるとか。何かをするときに面倒、嫌だなと思うのはやる前だけのこと。はじめてしまえばそうでもなかったことに気づくはずです。考えている暇があれば、まずは行動を。気になっていたことが片づけば心がすっきりし、次の行動にもすんなり移れます。そして、いいサイクルが作られます。