あやし皮膚科クリニック病院だより

気分も脳も活性化! 香りを楽しむ生活

 春になると、風に乗って花や草木の香りが漂ってきます。良い香りをかぐと、気持ちも華やいでくるようです。それでも、香りが少々分からなくても、生活に支障はない、と思っていませんか。実は嗅覚は、単に匂いを感じるだけでなく、脳の記憶や感情をつかさどる部位と深い関係があり、脳の老化にも大きな影響を与えています。

 体が老化していくのと同じく、匂いを感じる能力も年齢と共に衰えがちです。人は鼻の匂いセンサーで匂い物質を感知し、その刺激を神経のネットワークで脳に伝えています。脳で刺激を受け取るのは、海馬(記憶に関係する)や偏桃体(感情・行動に関係する)といった部位です。これらは、20代をピークに徐々に衰え、嗅覚が衰えると、海馬や偏桃体も共に衰えてしまいます。

 早く気がつきたい嗅覚の衰えですが、自分では気づきにくい、という特徴があります。カレーやメンソール(ミントの葉)など、特徴の強い匂いをかいで確認してみてください。もし、匂いがわかりにくい、といった症状があれば、耳鼻咽喉科に相談してみましょう。

 嗅覚が衰えると、食事が美味しく感じられず食欲不振から栄養不足になったり、覇気がなくなり引きこもりになりがちです。また、昼夜の時間間隔が失われてしまうこともあります。嗅覚の衰えを予防・改善する対策としては、意識しながら匂いをかぐ習慣をつけてみましょう。「これは何の匂いなのか」と、考えることで脳内の匂いネットワークが回復していきます。

 ドイツでは、嗅覚の治療として、アロマが利用されることもあります。その方法ですが、4種類の香りを、何の匂いか確認しながら、1日2回 各15秒かぎ、嗅覚の回復を図っていきます。自宅で行う場合、バニラエッセンスやレモンのアロマオイルなど、スーパーや雑貨店などで手に入る強い香りや好みの香りを用意し、休憩を挟みながら毎日嗅いでみてください。