あやし皮膚科クリニック病院だより

「普通」ってなんだろう? みんなちがって、みんないい

今の日本は、人によって接する情報も、価値観も、経済状態、生活実態も様々です。ところが、多くの人が、まだ高度成長期以来の「普通幻想」にとらわれています。生活様式が多様化しているのに、なぜか皆同じ条件で暮らしている(=普通の人)、と思っているのです。1970年代の日本では、「一億総中流」という言葉がよく使われていました。実際9割以上が自分を中流階級だと感じ、1979年の「国民生活白書」では、「国民の中流意識が定着した」と評価されています。

 時が流れ、経済状況も家族構成もずいぶん変化しました。たとえば30代前半男性の未婚率は、1960年には1割ほどでしたが、今では5割に迫っています。また、「夫婦と未婚の子ども」の世帯が減り、「単独」や「夫婦のみ」の世帯の割合が増えています。専業主婦と共働きの数も逆転し、現在は共働き世帯が多数を占めています。

 それでもなんとなく、私たちの心の中には「皆同じ」という気持ちがあるようです。そして、その気持ちが自分たちを窮屈にしているのかもしれません。他の人の持っているものが欲しくなったり、同じことをしたくなったりすることはよくあります。でも、「それが普通だから私もそうしたい」と思ったなら、黄色信号です。

 普通を基準にすると、「しんどいな、辛いな」と感じる人は必ずいます。ハラスメント被害を受けても、普通はそんなことぐらいで騒ぎ立てないだろうと我慢する人。普通は1人で頑張るものと思い、子育てや介護を抱え込む人。ママ友とのランチが高すぎて負担になっても、普通のお付き合いだから、と無理をしている人。「世間なみに~」という言葉はあまり使われなくなってきましたが、それでもどこかに残っている「普通」から解放され、「みんなちがって、みんないい(金子みすゞ)」と思えたら、毎日がもっと楽しくなるかもしれません。