あやし皮膚科クリニック病院だより

第104回温泉に入りたくても入れないひと

こんにちは、理事長の工藤です。

前号では「パーフェクトな手洗い法とその落とし穴!」についてお話しました。

今回は「温泉に入りたくても入れないひと」についてお話します。  

突然ですが質問です。あなたは温泉が好きですか?最近はどこか温泉旅行に行きましたか?実は、私たちの周りには、「温泉が好きで、温泉に行きたいんだけど温泉に行けない」という方たちもいます。

「尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)」という病名を聞いたことがありますか?

ずいぶんとむずかしそうな名前ですよね。この「乾癬(かんせん)」という病気は、おでこの、髪の生え際にカサカサした赤い湿疹がでることもあるので、「脂漏性皮膚炎」とまぎらわしいこともあります。この病気も日常的に非常によくみる病気です。 典型的な症状をお話します。

どのような症状なの?

くっきりした赤みの上に、かさかさした白いフケが非常に厚くくっつきます。この白いフケ・かさかさ、がこの病気の特徴のひとつです。もし、全く白いフケやカサカサがなく、ただの赤みだけであれば、尋常性乾癬は考えにくいです。皮膚の細胞は、皮膚の下の方で生まれ、徐々に皮膚の表面に上がってきます。そして、いずれは最も表面まで上がってきて、ついには「フケ」になってはがれおちます。これが皮膚の細胞の一生です。この生まれ変わるまでの期間は通常「28日間」です。(これを「ターンオーバー時間」と言います。)ところが乾癬では、このターンオーバーする期間が「4~7日間」と、非常に短くなってしまいます。ですから、どんどんどんどん、凄いスピードで新しい皮膚の細胞が生まれて、皮膚の表面まで上がってきてしまいます。これらがすべてフケになって、はがれ落ちます。そのため、たくさんののフケ・かさかさがみられる訳です。一言でいえば、「皮膚の細胞が早く生まれ変わりすぎる病気」と言えるかも知れません。頭、髪の生え際、肘や膝、おしり、など刺激を受けやすい場所に症状がでます。

しかし、そういった場所だけでなくすねや腰まわりににも多くみられます。全身に広がる方もいます。他人にうつることはありません。 体質や遺伝が関係していると考えられていますが、乾癬の方の御家族全員が発病するわけではなく、5%程度と低いです。はっきりとした原因はまだ解明されていません。そのため、根本から治療する方法がなく、塗り薬や飲み薬で症状を抑えていく、という治療がメインになります。決して、命にかかわる病気ではないのですが、全身に大量のフケやカサカサがついた赤みが広がる場合、見た目を気にされる方が多いです。例えば「うつらない病気だけど、うつると思われて嫌がられるんです」「フケがぼろぼろ出て、服のすそから落ちてまわりにひろがるから、不潔な人間だと思われちゃうんです」と言った深刻な悩みを抱えていらっしゃる方も多いです。一番多く聞く悩みは、「温泉に行きたいんだけど、人目が気になって行けないんです。」というものです。

 治療で症状を抑えることもできますので、お気軽にご相談ください。