あやし皮膚科クリニック病院だより

第101回市販の水虫薬を使っても良いですか?

こんにちは、理事長の工藤です。前号では「注意!あなたの足は本当に水虫ですか?」についてお話しました。

今回は、「市販の水虫薬を使っても良いですか?」についてお話します。

「市販水虫のお薬」が沢山出回っています。テレビCM盛んですし、あなたのお近くのドラッグストアでもたくさん売っているでしょう。病院で処方される水虫薬ではない、これらのお薬でももちろん、水虫は治ります。ただし、いくつかの注意点があります。

まず、皮膚科医の顕微鏡検査を受けずに、自己判断で水虫治療を開始してしまう危険が高まります。これは前回お話ししました、「水虫に似ているけれど違う病気」があるためでしたね。この場合、薬を塗っても塗っても治りません。

 また、気になるのは、市販薬の成分です。薬の主成分は皮膚科で処方されるものと同一のものです。ですので水虫に対する効果があるのですが・・・。実は市販薬は、水虫をやっつける成分以外にもたくさんの余計な(?)成分が入っています。例えば、消毒薬、局所麻酔薬、かゆみどめの成分などです。消毒薬は、通常の濃度では水虫菌を殺すことはできないことがわかっています。ですので、消毒薬は不要ではないでしょうか。そもそも、主成分に抗真菌作用(抗水虫作用)の成分が入っているのでそれで十分と思われます。また、水虫治療になぜ麻酔薬?と思ってしまいます。かゆみなどの感覚を麻痺させる、ということなのでしょうか・・・水虫はかゆみがない場合も多いのですが・・・。同様の理由から、かゆみ止めの成分も必ずしも必要ではありません。もちろん、かゆみを伴う水虫もあります。しかし、市販薬に含まれるかゆみ止め成分は水虫菌によるかゆみにはあまり効果がないと考えられているものです。

さらに、これらの余分な成分がたくさん入っている分、「かぶれ」を起こしやすくなってしまう、という問題もあります。この場合、市販薬を塗れば塗るほど、病変部分がどんどん赤くなり、じくじくして、かゆみも増してきます。 また、仮にあなたの足が本当の水虫であったとしても、いくつか落とし穴があります。例えば、水虫菌でふやけた部位から、「全く別の細菌」が皮膚の下へ入ってしまい感染・炎症を起こしていることもあります。(この病態を「蜂窩織炎(ほうかしきえん)と言います)この場合、抗生物質の内服が必要です。また、爪やかかとに菌が拡大した場合、水虫の外用だけでは改善しない場合も多いです。その場合は、「水虫の飲み薬」が必要となります。必ずしも、外用薬を塗ればよい、という訳ではありません。さらに、お値段も気になります。通常、市販の水虫薬は、皮膚科で処方されるお薬の「約5倍」の値段です。逆にいえば、病院で水虫薬をもらえば、5分の1の値段で薬が入手できる、ということになります。水虫の薬は、1カ月以上続けて塗って効果が出てくるので、安いに越したことはないと思います。

 ですので、総合的に判断すると、「水虫かな?」と思った場合、一度、皮膚科を受診する方が無難だと思います。